光はどのようなルートを通るのか(フェルマーの原理)
フェルマーの原理とは
光は、到達時間が停留値になる経路を通る
という主張をしている原理です。詳しく見てゆきましょう。光の到達時間について考えるために光の進みにくさを表す関数$n(x)$を定義します。
$$ n(x) \equiv \frac{c}{v(x)} $$
ここで$v(x)$は物質を通り抜ける際の光の速度で、$c$が真空における光の速度です。この$n(x)$は真空に対して光が進みにくいかを表す関数であり今後$n(x)$を「屈折率」と呼ぶことにします。この進みにくさ$n(x)$を加味したうえで、光がある点Pから点Qまで通り抜けるの感じる距離は $$ L_{op}=\int_{P}^{Q} n(x) dl $$ と表現されます。「真空中でどれだけの距離を進んだのと同じ効果を持つか」と言い換えても良いかもしれません。光はこの値$L_{op}$が停留値つまり一階変分がゼロになるようなルートを通るということが分かっています。 $$ \delta L_{op} = \delta \int n(x) dl =0 $$
屈折率を変えた時の最短航路シミュレーションがあります。 これを見ると光は移動距離が極小となるような道筋を取るということがどういうことかはわかると思います。
また注意すべきこととしては極小だけではなく、光路長が極大となるようなルートも可能であるということを忘れてはいけません。$L_{op}$の関数形状が谷であろうが山であろうが鞍点であろうがそのような光の経路は許されます。とはいえ、$L_{op}$ の関数形状は一般に谷状の下に凸な関数形状であり、極大や鞍点というのはなかなか出てこないようです。(極大や鞍点というのはなかなか出てこないのになぜ極小ではなく停留値だということが分かったのか?謎ですね。極大や鞍点となるような光の経路はどのように見えるのか?これを調べるのは今後の課題とさせてください。)
力学にもフェルマーの原理は存在するのか(変分原理)
それでは物体の運動もフェルマーの原理のように「なんらかの値」の停留値を取るように運動しているのでしょうか?この場合の光路長に対応するものは何なのでしょうか?? 「光路長$L_{op}$」は力学において「作用$S$」と呼ばれる量に対応します。「作用」が停留値を取るように物体は運動するということが先人たちにより判明しています。これを「変分原理」と呼びます。 $$ \delta S =0 $$ では「作用」とは何なのでしょうか。作用は「ラグランジアン」の時間積分です。 $$ S= \int L dt $$ じゃあラグランジアンってのは何なんだよ。ここが今回の話の肝です。古典力学においてラグランジアンは運動エネルギー$T$ ,位置エネルギー$V$を用いて $$ L = T-V $$ と表現されます。ここから先は「変分原理」をニュートンの運動方程式、シュレーディンガー方程式、マクスウェル方程式のバックグラウンドにある共通した原理だと考え、運動エネルギー$T$や位置エネルギー$V$の具体的な形を代入してみたり、場合によっては別の項をラグランジアンに加えたりしながら、そこから基礎方程式が本当に導かれるのかを確認していきます。 なお、ここで「作用」という言葉を用いましたが「作用・反作用の法則」の作用ではありません。またこの「変分原理」のことは一般に「最小作用の原理」と呼ばれるのですが、最小ではなく停留値です。 すべてがややこしいです。
①変分原理⇒ニュートンの運動方程式
ニュートンの運動方程式の場合の運動エネルギー$T$と位置エネルギー$V$の具体形を考えてゆきます。 今回は高校物理で良く出てくる例であるバネ定数$k$のバネにつながれた質量$m$の質点の運動が変分原理から出てくるか確かめたいと思います。この時の運動エネルギー$T$は$\frac{1}{2}m\dot{x}^2$、位置エネルギー$V$は$\frac{1}{2}kx^2$だったことを思い出してください。つまりラグランジアンは以下のようになります $$ L = T-V=\frac{1}{2}m\dot{x}^2 - \frac{1}{2}kx^2 $$
作用$S$は通常の関数(「値」を入力し「値」を出力するもの)とは異なり、「関数」を入力し「値」を出力する関数であり、これを汎関数と呼び、$S[x]$と書きます。汎関数の微分を行うために作用$S$の変分を考えるために経路の端(始点と終点)を固定したまま経路を一瞬微小に変化させることを考えます。,経路の始点の時刻を$t_1$終点の時刻を$t_2$、微小な変化$h$が加わる時刻を$\tau$を用いて以下のように表現しましょう。
$$ x(t) \to x(t) + h \delta(t-\tau) $$ ただし$\delta (\tau)$はデルタ関数です。$S[x]$に対する汎関数微分は以下のように表現されます。
$$ \frac{\delta S[x]}{\delta x (\tau)} =\lim_{h\rightarrow 0} \frac{S[x(t)+h\delta (t-\tau)]-S[(x)]}{h} $$
これを実際に行ってゆきましょう。
$$ S[x] = \int_{t_1}^{t_2} \left( \frac{1}{2}m\dot{x}^2 - \frac{1}{2}kx^2 \right) dt $$
より $$ S[x+h\delta] =\int_{t_1}^{t_2} \left[ \frac{1}{2}m(\dot{x}+h \dot{\delta})^2 -\frac{1}{2}k(x+h\delta)^2 \right] dt $$ となります。この後の計算で$h$によって割り算されたのちに$h \rightarrow 0$の極限が取られることを考慮して$h$の一時まで展開します。
$$ S[x+h\delta] =S[x]+h \int dt \left[ m\dot{x}\,\dot{\delta}-k x\,\delta\right]+ O(h^2) $$ したがって
$$ \frac{S[x+h\delta]-S[x]}{h} =\int_{t_1}^{t_2} dt \left[ m\dot{x}\,\dot{\delta} -k x\,\delta \right] $$
ここで積の微分法則 $$d(fg)=gdf+fdg$$を積分した $$ \int d(fg)= [fg] =\int g df + \int f dg $$ を用いる(今後この手法を部分積分と呼びます)と
$$ m \int_{t_1}^{t_2} d( \delta \dot{x}) = m[ \delta \dot{x} ]_{t_1}^{t_2} =m\left( \int_{t_1}^{t_2} dt \dot{x}\,\dot{\delta} + \int_{t_1}^{t_2} dt \ddot{x}\,\delta \right) $$
となります。ここで端点は固定されているので境界項$\left[\delta \dot{x}\right]_{t_1}^{t_2}$はゼロになります。よって
$$ \int_{t_1}^{t_2} dt m \dot{x}\,\dot{\delta}=- \int_{t_1}^{t_2} dtm \ddot{x}\,\delta $$
となり $$ \frac{S[x+h\delta]-S[x]}{h}=\int^{t_2}_{t_1} dt \left[ - m\ddot{x}-k x\right]\delta(t-\tau) $$
と変形されます。デルタ関数は$t=\tau$のときのみ1になる関数なので
$$ \frac{\delta S}{\delta x(\tau)} =\int^{t_2}_{t_1} dt \left[ - m\ddot{x} -k x\right] \delta(t-\tau)=- m\ddot{x}(\tau)-k x(\tau) $$ また変分原理から $$ \frac{\delta S}{\delta x(\tau)} =- m\ddot{x}(\tau)-k x(\tau)=0 $$ なので
$$ m\ddot{x} = - kx $$
これにより高校物理で出てくる例であるバネ定数$k$のバネにつながれた質量$m$の質点の運動が変分原理から出てくることが確かめられました。
②変分原理⇒シュレーディンガー方程式
変分原理からそのままシュレーディンガー方程式を出しても良いのですが、今回はファインマンの経路積分を経由て導出したいと思います。
ファインマンの経路積分
粒子がある座標と位置$(x_0,t_0)$から別の位置$(x_1,t_1)$に遷移する確率の振幅はこの2つの位置が「非常に近い時」 $$ \bra{ x_1,t_1 }\ket{x_0,t_0} = \sqrt{\frac{m}{2 \pi i \hbar dt }} \exp( \frac{i}{\hbar} \int_{t_0}^{t_1} L dt) $$
に対応するということが分かっています。ここで出てきた$L$というのはこれまでの計算で出てきたラグランジアンであり、$\int_{t_0}^{t_1} L dt$は作用$S$です。これの証明は略します。
では位置$(x_0,t_0)$から別の位置$(x_1,t_1)$が近くないときはどうすればよいのでしょうか?間に点を挟み込んでゆくことで、微小に近い点を取り扱えばよい形にしてゆきます。完全性関係$\hat{I} =\int da \ket{a}\bra{a}$を上式に用いてゆきます。
$$ \bra{x_n,t_n}\ket{x_0,t_0} = (\frac{m}{2 \pi i \hbar dt })^{\frac{N-1}{2}} \int dx_{n-1} ... \int dx_1 \bra{ x_n,t_n }\ket{x_{n-1},t_{n-1}}... \bra{ x_1,t_1 }\ket{x_0,t_0} $$
これにより2つの位置が非常に近い時に使える式を使うことが可能になり、
$$ \bra{x_n,t_n}\ket{x_0,t_0} = (\frac{m}{2 \pi i \hbar dt })^{\frac{N-1}{2}} \int dx_{n-1} ... \int dx_1 \Pi^{N}_{n=1} \exp(\frac{i}{\hbar} \int_{t_n}^{t_{n-1}} L dt )=(\frac{m}{2 \pi i \hbar dt })^{\frac{N-1}{2}} \int dx_{n-1} ... \int dx_1 \exp(\frac{i}{\hbar} S ) $$
と遷移する確率の振幅を表現できます。この操作の意味を考えるとするなら「ありうる限りの$(x_0,t_0)$から$(x_1,t_1)$の間に挟まる点を考えてすべての間の点を通る経路を考えてその遷移確率振幅を足し上げている」ということであり、これが経路積分ということになります。
ここでこのファインマンの経路積分から微小時間発展要素を取り出すという回りくどいことをして経路積分がシュレーディンガー方程式を導き出すことが出来ることを示します。(これは本来ファインマンの経路積分形式がシュレーディンガーの波動関数形式と等価であることを示すものです。)
まずはファインマンの経路積分から微小時間発展要素を取り出します。 $$ \bra{x_N,t_N}\ket{x_1,t_1} = (\frac{m}{2 \pi i \hbar Δ t })^{\frac{1}{2}} \int dx_{N-1} exp \left[ (\frac{im}{2 \hbar} ) \frac{ (x_N -x_{N-1})^2 }{Δ t} - \frac{iV(x) Δ t}{\hbar} \right]\bra{ x_{N-1},t_{N-1} }\ket{x_1,t_1} $$
この式において$x_{N} \rightarrow x$、$x_{N-1} \rightarrow x - \xi$、$t_{N} \rightarrow t+ Δt$,$t_{N} \rightarrow t$と変数を置き直します。
$$ \bra{x,t+Δt}\ket{x_1,t_1} = (\frac{m}{2 \pi i \hbar Δ t })^{\frac{1}{2}} \int d\xi exp \left[ (\frac{im}{2\hbar} ) \frac{ \xi^2 }{Δ t} - \frac{iV(x) Δ t}{\hbar} \right] \bra{ x - \xi ,t }\ket{x_1,t_1} $$
$\xi$と$Δt$が微小であることを考慮し、$\bra{ x - \xi ,t }\ket{x_1,t_1}$と$\bra{x,t+Δt}\ket{x_1,t_1}$と$exp \left[ - \frac{iV(x) Δ t}{\hbar}\right]$をそれぞれに対してテーラー展開します。ただし$\int d\xi \xi exp(i \xi^2)$に比例する項は奇関数であり積分すると消えるので無視します。
$$ \bra{x,t}\ket{x_1,t_1} +Δt \frac{\partial}{\partial t} \bra{x,t}\ket{x_1,t_1}= (\frac{m}{2 \pi i \hbar Δ t })^{\frac{1}{2}} \int d\xi exp \left[ (\frac{im}{2\hbar} ) \frac{ \xi^2 }{Δ t} \right] (1 - \frac{iV(x) Δ t}{\hbar}+ ...) \left[ \bra{ x ,t }\ket{x_1,t_1} +\frac{\xi^2}{2} \frac{\partial^2}{\partial x^2} \bra{ x ,t }\ket{x_1,t_1} \right] $$
ここで$Δ t$の2次の項以降は微小すぎて無視するに値するとして式を変形します。 またガウス積分公式を使います。
$$ \int d\xi \xi^2 \exp(\frac{i m \xi^2}{2 \hbar Δt }) = \sqrt{2 \pi} (\frac{i\hbar Δt}{m})^{3/2} $$
すると上式は以下のようになります。
$$ Δt \frac{\partial}{\partial t} \bra{x,t}\ket{x_1,t_1} =(\frac{m}{2 \pi i \hbar Δ t })^{\frac{1}{2}} \sqrt{2 \pi} (\frac{i\hbar Δt}{m})^{3/2} \frac{1}{2} \frac{\partial^2}{\partial x^2} \bra{x,t}\ket{x_1,t_1} -\frac{i}{\hbar} Δt V\bra{x,t}\ket{x_1,t_1} $$
この式を変形することにより下式を得ます。これはシュレーディンガー方程式です。
$$ i \hbar \frac{\partial}{\partial t} \bra{x,t}\ket{x_1,t_1}=-\frac{\hbar^2}{2m} \frac{\partial^2}{\partial x^2} \bra{x,t}\ket{x_1,t_1}+V\bra{x,t}\ket{x_1,t_1} $$
この計算には変分原理が出てきませんでした。しかしあらゆる経路を考慮する計算の中でどのような経路が主に経路積分に寄与するのか評価してみると話が変わってきます。リーマン-ルベーグの補題というのがあります。 (坂本眞人 場の量子論Ⅱ 4.散乱行列の一般的性質とLSZ簡約方式 4.4 漸近条件と弱極限 4.4.4 リーマン-ルベーグの補題 p.85)
$$ \lim_{t\rightarrow \infty } \int_{a}^b dx f(x) \exp(itx) =0 $$
つまりexpの中身である位相の変化が激しい経路の経路積分のへ寄与はゼロになります。これはすなわち経路積分において位相の変化が緩やかなところつまり$\delta S \simeq 0$となるところの寄与が大きくなることを意味しています。もし$\delta S = 0$だけを抜き出してきた場合、これは「変分原理」が成立する経路のみからの影響を考慮するという意味であり、古典力学的な経路からの影響だけを考慮することになります。というような形で「変分原理」とのつながりを見ることが出来ます。 (普通は変分原理からシュレーディンガー方程式を導く場合、経路積分を使わずにもっと直接的に導出しますが経路積分が好きだったので寄り道してみました。)
(JJサクライ 現代の量子力学(上) 2章 量子ダイナミクス 2.6 プロパゲーターとファインマンの経路積分)
③変分原理 ⇒マクスウェル方程式
マクスウェル方程式を導くためのラグランジアンについて考えます。 前回までと違うのはマクスウェル方程式は$E(x,t)$のようなものを求める方程式、つまり座標と時間が引数になっている理論であるため、力学的変数が座標$x(t)$であった前回までとは違い空間的な密度のようににラグランジアンが計算されるということです。 この$\mathcal{L}$をラグランジアン密度と呼びます。 $$ S= \int dt \int dx \mathcal{L} $$
では具体的にラグランジアン密度を表してゆきましょう。 まず真空における電磁場のラグランジアン密度は以下のようになります。(坂本眞人場の量子論1 9.6 ゲージ場の作用積分 p.257) $$ \mathcal{L} =\frac{1}{2} (E^2 -B^2) $$ ここで一項目は電場のエネルギー密度、2項目は磁場のエネルギー密度です。 ここから真空におけるマクスウェル方程式を導いてゆきます。
ラグランジアンを見てわかるようにこのままE,Bを変数として、$\delta S/\delta E =0$、$\delta S/\delta B=0$、としても $E=0,B=0$という解しか存在しないことになります。 ここから先は電場E,磁場Bを生み出す源である電位(スカラーポテンシャル)$\phi(x,t)$とベクトルポテンシャル$A(x,t)$を用いて計算を進めてゆきます。
$$ E= - grad \phi - \partial_t A $$
$$ B=rot A $$ (砂川重信 理論電磁気学p.46)
ベクトル解析という数学の分野の知識を用いることで$div (rot A )=0$であることが分かるので磁場$B$について $$ div B=0 $$ が成り立ちます。また電場についても$rot (grad \phi)=0$と$rot A = B$を用いることで、$E=- \nabla \phi - \partial_t A$は以下のように変形できます。 $$ rot E + \partial_t B =0 $$
これらはラグランジアン密度からではなくスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを用いた電場$E$と磁場$B$の定義から出てきていることに注意してください。4本あったマクスウェル方程式のうち2本が電場と磁場のくスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルを用いた表記から出てきているため、ラグランジアン密度からは残りの2つが出てくることを期待します。
場のオイラー=ラグランジュ方程式
これまでの変数は座標 $q(t)$ だった場合の作用は $$ S[q]=\int L(q,\dot q,t)\,dt $$
でした。何度でも言いますが場の理論では、変数が$x$ではなく $\phi(x)$ になります。その場合の作用は以下のように記述されます。
$$ S[\phi]=\int d^4x\,\mathcal{L}\bigl(\phi,\partial_\mu\phi\bigr) $$
ここで$d^4x = dt\,d^3x$です。これの変分を考えます。
$$ \phi(x) \rightarrow \phi(x) + \delta\phi(x) $$
この場合作用の変化は $$ \delta S=\int d^4x\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}\delta\phi+\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\partial_\mu(\delta\phi)\right) $$
となります。第二項を部分積分します。
$$ \int d^4x \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\partial_\mu(\delta\phi)=\int d^4x\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\delta\phi\right)-\int d^4x\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)\delta\phi $$
第一項は境界項であり、経路の始点と終点を固定した状態で取りうる経路を考えているという前提から境界項は消えます。つまり$\delta\phi|_{\text{境界}}=0$です。よって$\delta S$は以下のようにまとめることが出来ます。
$$ \delta S=\int d^4x\left[\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}-\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)\right]\delta\phi $$
変分原理$\delta S=0$が任意の $\delta\phi$ に対して成立するためには
$$ \boxed{\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi}-\partial_\mu\left(\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu\phi)}\right)=0} $$
でなければなりません。この式はオイラー=ラグランジュ方程式と呼ばれます。 (坂本眞人 場の量子論 不変性と自由場を中心にして p.239)
真空におけるラグランジアン密度
まずは簡単な場合として真空(電荷密度$\rho=0$かつ電流密度$j=0$)の場合を考えましょう。この場合のラグランジアン密度は以下のようになります。
$$ \mathcal{L}=\frac{1}{2} (E^2 - B^2) $$
これの変分を計算してゆきます。
$$ E= - grad \phi - \partial_t A $$ $$ B=rot A $$ であり、すでにマクスウェル方程式の4つの式のうち $$ div B=0 $$ と $$ rot E + \partial_t B =0 $$ は$\phi$と$A$を用いることにより求めることが出来ていることを忘れないようにしましょう。
$\phi$で変分
$L$は$\phi$に直接依存せず、$E$を通して$\nabla \phi$の形でしか$L$に現れません。
$L$は$\phi$に直接依存しないので $$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial\phi}=0 $$ であり$\nabla \phi$に関しては
$$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial(\partial_i\phi)}=\frac{\partial \mathcal L}{\partial E_j}\frac{\partial E_j}{\partial(\partial_i\phi)} $$ であるのでこれを計算してゆきます。
$$ E= - grad \phi - \partial_t A $$
を成分表示すると、
$$ E_i=-\partial_i\phi-\partial_t A_i $$
なので
$$ \frac{\partial E_j}{\partial(\partial_i\phi)}=-\delta_{ij} $$
よって
$$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial(\partial_i\phi)}=\frac{\partial \mathcal L}{\partial E_j}\frac{\partial E_j}{\partial(\partial_i\phi)}=E_j(-\delta_{ij}) $$
ここでオイラーラグランジュ方程式から
$$ \partial_i E_i=0 $$ つまり $$ \boxed{\nabla\cdot E=0} $$ であり、これは真空($\rho=0$)の場合のガウスの法則を導くことが出来たことになります。
$A$で変分
$E$と$B$を成分表示すると $$ E_i=-\partial_i\phi-\partial_t A_i $$
$$ B_i=\epsilon_{ijk}\partial_jA_k $$
となります。ここから分かることとしてラグランジアンは$A_i$には直接依存せず、$\partial_t A_i,\quad \partial_j A_i$という形で依存することとなります。なので $$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial A_i}=0 $$ であり、オイラーラグランジュ方程式を計算するためには残りの $$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_tA_i)}=\frac{\partial\mathcal L}{\partial E_j}\frac{\partial E_j}{\partial(\partial_tA_i)} $$
$$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_jA_i)}=\frac{\partial\mathcal L}{\partial B_k}\frac{\partial B_k}{\partial(\partial_jA_i)} $$
を計算する必要があります。
$$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial E_j}=E_j $$
$$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial B_k}=-B_k $$
$$ \frac{\partial E_j}{\partial(\partial_t A_i)}=-\delta_{ij} $$
$$ \frac{\partial B_k}{\partial(\partial_jA_i)}=\epsilon_{kji} $$
であるので
$$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_tA_i)}=\frac{\partial\mathcal L}{\partial E_j}\frac{\partial E_j}{\partial(\partial_tA_i)}=E_j(-\delta_{ij}) $$
$$ \boxed{ \frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_tA_i)}=-E_i } $$ また $$ \frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_jA_i)}=\frac{\partial\mathcal L}{\partial B_k}\frac{\partial B_k}{\partial(\partial_jA_i)}=(-B_k)\epsilon_{kji} $$
$$ \boxed{\frac{\partial\mathcal L}{\partial(\partial_j A_i)}=-\,\epsilon_{kji}B_k} $$
これらをオイラーラグランジュ方程式に代入することにより $$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial A_i} -\partial_t \left(\frac{\partial \mathcal L}{\partial(\partial_tA_i)}\right) -\partial_j\left(\frac{\partial \mathcal L}{\partial(\partial_jA_i)}\right)=0 $$
$$ \partial_tE_i+\epsilon_{kji}\partial_jB_k=0 $$ つまり $$ \boxed{ \nabla\times B=\partial_tE } $$ が得られます。 これによって真空(電荷密度$\rho=0$かつ電流密度$j=0$)の場合のマクスウェル方程式が導かれました。
(坂本眞人 場の量子論 不変性と自由場を中心にして p.257)
電荷密度$\rho$と電荷密度$j$が存在する場合
電荷密度$\rho$と電荷密度$j$が存在する場合、電磁場はそれらと相互作用するため、ラグランジアン密度に相互作用項を追加する必要があります。そのラグランジアン密度は以下のようになります。 $$ \mathcal L=\underbrace{\frac12(E^2-B^2)}_{\text{電磁場の自由ラグランジアン}}+\underbrace{(\rho\phi-j\cdot A)}_{\text{相互作用項}} $$
この相互作用項の影響で先ほどの計算でゼロとなっていた$\frac{\partial\mathcal L}{\partial\phi}$と$\frac{\partial\mathcal L}{\partial A_i}$は値を持つようになります。 $$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial \phi}=\rho $$
$$ \frac{\partial \mathcal L}{\partial A_i}=- j_i $$
結果として $$ \boxed{\nabla\cdot E=\rho} $$
$$ \boxed{\nabla\times B=j+\partial_t E} $$
となり、変分原理からマクスウェル方程式を導くことが出来たました。
変分原理すごいぜ!
変分原理大好き!変分原理すごいぜ!みんなありがとう!でもさぁ実験でそれを確かめることもできない人間が数式をいじって変分原理から基本方程式を導き出したとしてもそれって陰謀論とどう違うんですか?(ぶち壊し)
(疑問)「確かに変分原理から古典や電磁気の方程式が出るが、そうなるように恣意的に作用を選んでいるだけなのでは」
半分はYESと言えます。なぜならラグランジアンや作用というのは光でいうところの「フェルマーの原理」と同じようなものを見つけるために作られた値であり、ラグランジアンが物理的に意味するところを考えてみても$T+V$であれば全エネルギーとして解釈ができるのですが、$T-V$であるためそのように解釈することが出来ません。つまり人為的な量です。しかし、もう半分はNOだとも言えます。なぜならラグランジアンは人為的に作られた量ではありますが、それに加えられる項に制限があり、それらの制限が物理の基本方程式を形作っていると解釈できるからです。 例えば
- 不変性(空間並進対称性・時間並進対称性・回転対称性・相対論的不変性・ゲージ対称性など)
- エルミート性
- 局所性
- 真空の存在
- くりこみ可能性
といった制限があります。これらの制限を満たす形でラグランジアンを書こうとすると、その形はほとんど一意的に定まってしまいます。そして、その停留条件から導かれる方程式こそが、ニュートン方程式やマクスウェル方程式といった基本方程式になります。...ということが参考にしている文献である「坂本眞人 場の量子論」で主張されているのですが、深く理解できているとは言えないので今後の宿題とさせてください。 ( 坂本眞人 場の量子論 不変性と自由場を中心にして 9.3 作用積分の一般要請 p.244 p.263)
参考文献
- メシア『量子力学 I』東京図書 (1971)
- J J サクライ『現代の量子力学 上』吉岡書店 (1985)
- 坂本眞人『場の量子論 不変性と自由場を中心にして』裳華房 (2014)
- 前野昌弘『よくわかる特殊相対論』東京図書 (2024)
- 砂川重信『理論電磁気学』紀伊國屋書店 (1999)
- R P ファインマン『光と物質のふしぎな理論 私の量子電磁力学』岩波書店 (1987)





































